Star Inn Tokyo 12

 この日記も十を超えたので、仕事上の確認があったのも兼ねてざっと今までの記事を見直してみたのだが、存外日付を超えていたり、ちょっと内容がかぶってたり、なんだこんなもんか、という感じだった。しょせん一人仕事だから、ちょくちょく詰めが甘い。日付超えてから更新している今日も今日だが。

 

 

 泊まっているお客は、これまでも書いてきたようにバラエティーに富んでいる。人種、国籍、年齢、職業、大勢を占めているというような共通項はほとんど見出せない。強いていうなら若者が多いこと、職業が学生の人間が少なからずいること、そして何より八割方が外国人だということぐらいだ。だから、彼ら彼女らの行動もその人と時によって実に様々に変わる。

 例えば、一日部屋に閉じこもって出てこないお客がいたりする。聞き耳を立てていたわけではなくここの構造上そうなってしまうというだけなのだが、特に話し声が聞こえるわけでもなく、一日中静かであった。ちなみに、若い女性の三人連れである。一番ずっと喋っていそうに見える集団がその実、今ここに泊まっている中でどこよりも静かだった。そしてたまに、恐らくはトイレかシャワーだろう、部屋から誰かが出てくるときがあったのだが、表では絶対に拝めなさそうなラフ極まる格好だった。ひょっとすると相当、日常生活で疲れているのかもしれない。いやそれは邪推が過ぎるか。

 またこれは偏見であるかもしれないことを断った上で。昨日も書いたアメリカ人男性二人連れ。今さっき玄関で行き会ったのだが、こんな深夜にどこへ行くのかと尋ねたら、ランニングに行くのだという。わざわざランニングシューズを別に持ち込んで、こんな異国の地でまで、しかもこんな寝静まってから走りに出かけるとは随分とアクティブだ。近くの川までの行き方を聞かれたので、簡単に教えた。生まれてこの方運動嫌いで自分から運動したことなど数えるほどしかない私からしてみれば、かつて高校時代外周をしている運動部の連中を見たときの気分だった。よくやるなあ。

 

 

 どこそこへ行くというプランをしっかりと立て、朝早くから夜遅くまであちこち出かけているお客がいる。ノープランの行き当たりばったりで、とりあえず思いついたところへ出かけるお客もいる。遠くへ出かけるのではなく、休息こそを第一としてゆっくりと遅くまで寝ている客もいる。東京という町は徒歩圏に基本なんでも揃っているから、どんな過ごし方も一通りできる。ましてこういった泊まることに特化した宿泊施設であるなら、その選択肢は更に広い。人がどんなプランで動いているのか、それが眺められるのもここの悪くないことの一つだ。

 ただ、今それができる人間がそう多くはないことも、ここを見ているとなんとなく分かる。かく言う私も含め世の大多数は、今日も今日とて他人の心と渡り合いながらあくせく労働に励んでいるのだから。つまるところ、金か時間か、そのどちらかが(あるいはどちらも)ないのである。