Star Inn Tokyo日記  11

 八月もとうに後半に入り、少しずつ夜が早まりだした。あちこちに、鳴き終わった蝉の死骸が転がっている。盆も通り過ぎてしまうと、なんだか妙にさびしげな雰囲気だ。ここは相変わらずの客入りで、退屈も鬱屈もないが。

 

 

 昨晩少し夜更かししたので起きるのが遅くなり、飯が朝食兼昼食になったのだが、これまでになく間に合わせの飯になった。残しておいてもらったご飯にツナ缶をのせ、マヨネーズと醤油をかけた雑な丼と、スーパーで買ったドレッシングもついてない安いサラダ。しかしそれだけでも業務のための燃料補給には間に合う。そもそもここの従業員や経営陣は野郎しかいないので、そんな飯を食っていたところで誰が気にもとめやしない。チェックアウトも終わった昼日中じゃあ、なおさらだ。

 ベッドメイキングも、ここまでくればもう聞かずともいける。最初の頃は二段ベッドの上の段に手間取ったり、ダブルベッドの足にすねをぶつけたりしていたが、すっかりそんなこともなくなった。掃除するときのほこりっぽさにだけは未だに慣れないが。今日も外から戻ってきたら、くしゃみがしばらく止まらなくなったりしていた。布団がたくさんあるから、こればっかりはしょうがない。だからそこは一つ、我慢だ。

 

 

 夕食は、友人兼上司と焼き鳥屋で酒を交えてとった。青砥には何軒も焼き鳥屋があるが、意外にもチェーン店はさほど多くない。だからそのぶん、店ごとの面白みがある。出してるメニューや、串の焼き加減、酒の種類や客層など。時間と金に余裕があれば、もう少し回ってみたかったものだが。まあ、そもそも一人で焼き鳥屋に入るというのも、なかなか難しいことかもしれないが。どうしたって酒飲みたくなるし。

 夜、嬉しい出会いがあった。フリースペースでチェックインのお客を待ちつつNetflixルパン三世を見ていたのだが、それにアメリカ人の男性二人連れが食いついてくれた。おまけに片方の男性が日本語がかなり喋れたので、日本語字幕しかなくても楽しめるという嬉しい展開。そんな彼が見たいというので「血煙の石川五ェ門」を見たのだが、いつものルパンとはひと味違ったハードな展開と漢の世界で、見応え抜群だった。彼らもたっぷり楽しんでくれていたようで、見ながら突っ込みを入れまくっていた。だがそれもしょうがない。みんなハードボイルドだし、五ェ門が不死身すぎるし、不二子ちゃんがショートカットだし。

 ここで働き出してからというもの、日本のアニメ文化の恩恵にあやかり続けている。この国に生まれて本当によかった。みんなで見よう、日本のアニメ。

 

 

 しかし、彼らが部屋に戻った今、思う。

 なぜ日本語が話せる方の彼は、ちょくちょく関西弁が混じっていたのだろう?