まだ冬の始まり
寒い寒い寒い。とにかく寒い。
風が冷たい。空気が痛い。外を出歩いていると、耳が千切れそうに痛む。元来冷え性気味の手先や足先が、感覚を失いかけている。
冬は嫌いだ。
冬、米をとぐのが辛くなる。冷たい水にいつまでも手を突っ込んでいなければならないから、ものの数十秒で止めたくなる。一度とぎ汁を捨てて二度目の水を入れてからはもっとひどい。ちょっとした拷問のようにさえ思えてきたりすることもある。最終的には指の感覚は完全になくなっていて、しばらく手のひらを擦り合わせないと痛くてしょうがない。
冬は嫌いだ。
私の家の床はフローリングだ。その床が、冬ともなれば極寒同然の冷たさになる。素足で歩くなど論外、靴下越しにも伝わるその冷たさは、スリッパなしでは歩き回ることさえ困難なほどである。更に布団も冷たくなる。朝、微睡みの中で体を動かすと、さっきまでいた部分が急速に冷えてしまい、しばらくして元の体勢に戻ると冷たさが即座に皮膚に伝わってくる。せっかくゆっくり寝れる日でも、その寒さと冷たさにたたき起こされてしまい、寝不足気味だ。体温である程度暖まっていなければ寝られないとは、なんとももどかしい。そしてしょうがなく起きたとき、うっかり靴下のままフローリングに降りてしまえば、もう一度目を覚まされることになる。
冬は嫌いだ。
寒い休日はヒートテックを着込んだ上で、さらにコートに手袋、マフラーと重武装で家を出ることになる。当然家を出てしばらくの間は、寒さで筋肉がうまく動かない。しかし、自転車をこいでしばらく行くと、運動した熱が体に溜まっていく。そして結果、汗ばんでくる。ちょっと遠出をすれば、コートを脱ぎたくなることもある。しかし脱いだが最後、冷たい風と発汗による冷却効果で一気に体温は下がり、極寒地獄となるのは明白だ。故に脱げない。家に帰り着いて熱いからコートを脱いでみれば、服に汗が滲んでいたりする。しかししばらくは心地よくとも、その汗はすぐに、体から体温を奪い去る狂気に早変わりだ。脱いだらいいのか、着たらいいのか。
冬は嫌いだ。
本当に嫌いだ。
しかし、認めざるをえない冬のいいところはある。
まず一つ。厳しい寒さ故、鬱陶しい羽虫が一切出てこない。実にのびのびと生活を送ることができる。ありがたい。
そして二つ。温かい食事が、最高の美味さを手に入れる。鍋、ラーメン、スープ、おでん、味噌汁その他諸々。冬の寒さが、温かさそのものに旨味を与えてくれる。
この二つだけは、冬でなければもたらされない恩寵だろう。
冬は嫌いだ。
しかしまあ、ちょっとだけ、楽しい部分もある。